サイクルマガジンにはあらゆる分野のあらゆる肩書きの人々が研究論文を寄稿しているので、
その範囲は非常に広い。2006年版に実に興味深い本を紹介した論文があった。
1969年に相場変動の情報誌の発行をしていたジョージ・リンゼーという人物が発表した「The Other History」という本だ。
69年だからすでに38年も前の本だ。本の出版時にはほとんど何も注目されなかった。
本の目的は、相場の分析家であったリンズデーが、社会変化の長期波動の周期(サイクル)を特定化しようとしたことにある。
だが2007年の時点で読むとその内容には驚愕する。
36年と40年ないし41年、55年ないし57年、および64年ないし69年のサイクル
社会変動は、まず最初に変化の方向を決定した歴史的事件が出発点として存在し、
その発展としてもたらされるとリンズデーは考えた。
たとえばフランス革命は1789年のバスチューユ監獄の襲撃で始まるが、
革命がもたらした新しい社会は36年と40年、さらに55年ないし57年、そして64年ないし69年ごとに変動を繰り返し、
1789年に始まったサイクルは最終的には終結するとされる。
リンゼーによると、まず基礎となるのが40年ないし41年の変動サイクルだという。
これは出発点となった歴史的事件が引き起こした変動が一応の終結とその最終的な結果が出る期間だとされる。
1789年に始まったフランス革命が、ちょうど41年後の7月革命で、
ブルジョワジーによる市民革命は一定の成果を持って終結したとされているのがよい例だ。
36年周期は40年ないし41年周期を補完するサイクルとされている。
例が煩雑になりすぎるので詳述は避けるが、
55年ないし57年、および64年ないし69年のサイクルは、社会のシステム全体を変えるようなより長期的は変動をあらわすとされている。
日本の例
リンゼーの本には非常に多くの具体例が紹介されているようだが、
これを試みに日本に当てはめるとちょっと面白いことが分かる。戦後日本の出発点はいうまでもなく1945年の敗戦だろう。
終身雇用、護送船団方式、行政指導など日本型システムの骨格を成す国家管理型資本主義の枠組みは戦時中にすでに存在していたものの、
これが経済成長を本格的に達成するために基盤として導入されたのは戦後になってからである。
その意味では、1945年はまさに現在の日本の出発点だといえるだろう。
1945年からちょうど40年後は1985年、41年後は86年だが、
興味深いことに85年はバブル経済の発端となったプラザ合意(先進5カ国蔵相)、
86年にはバブル景気が始まった年である。バブル景気はまさに日本型成長モデルがもたらした成果だったので、
ちょうど1945年の敗戦で本格的に導入されたシステムが発展し、
バブル景気で最高潮を迎えたといえるだろう。それは日本型成長モデルの始まりから終結へと向かう過程だった。
さらに1945年から55年後は2000年に当たる。
小泉政権が誕生し構造改革がスタートするのが2001年4月26日なのでほぼその時期に匹敵する。
57年後の2002年は政府の不良債権処理策の否定面が出て株価が7000年台に突入する2003年に近い。
これらの出来事からみると、55年ないし57年の周期では1945年に導入された日本型システムは完全に破綻し、
寿命を終えたように見える。その後は構造改革に基づく市場原理主義のモデルが導入された。
では未来はどうだろうか?45年から64年後は2009年になる。
2年後だ。この頃に敗戦期に匹敵するような巨大な変動があり、
それに伴いまったく新たな社会システムが導入されるのかもしれない。
1年前後のずれがあるようなので、2008年くらいかもしれない。
今回の自民の参議院選挙の大敗などからみると、
自民党は2008年から09年頃には消滅し、日本はまったくあらなた政治勢力が支配しているのかもしれない。
ヤスの備忘録 歴史と予言のあいだ
http://ytaka2011.blog105.fc2.com/blog-date-200708.html
リンゼーの予知した未来
ところでこの本でリンゼーはこれらのサイクルの適用によって
未来に起こるべく社会変動を予知していた。
「1917年のロシア革命から69年後にあたる1986年から87年にかけて
ソビエトは崩壊へと向かう流れに入るであろう。発展から後退の動きは徐々に起こる。」
ゴルバチョフ書記長が1985年に登場し、
崩壊しつつあるソビエトのシステムを改革しようと、
ソビエトの構造改革にあたるペレストロイカとグラスノスチを断行したのが1986年である。
「次の社会変動の発端となった1926年の周期が終焉するのはその64-69年後の1990-1995年であるし、
フルシチョフ政権が誕生する1954年の変動から36年から41年周期に当たるのがやはり1990-1995年だ。
だがそれだけではない。1956年のハンガリー動乱から36年から41年周期に当たるのが1992-1997年だし、
1936年にスターリンによる大粛清の55年から57年後は1991-1993年だ、
1990年代に4つの周期がすべて交差している。ソビエトに没落の時期があるとすれば、
おそらく92年から93年にかけてであろう。」
事実、ソビエトは1992年にあっけなく崩壊してしまった。
「第2次大戦は1939年に起こったが、その36年から40年後にあたるのは1975年から82年だ。
この時期には第二次大戦の戦勝国は経済的困難に直面するであろう。」
この当時先進国は、1973年に起こったオイルショックから回復できず、
82年前後まで深刻な経済危機に陥った。
1969年に書かれた本の予言としては大変な的中率である。
驚愕する。
リンズデーはアメリカを支配するサイクルを詳細に説明しており、
アメリカを中心としたシステムは近い将来終焉するとされている。ならば今回の株価の暴落はその始まりなのか?
ヤスの備忘録 歴史と予言のあいだ
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