2020年3月2日月曜日

雑誌エコノミスト: 新型肺炎>>中国発世界不況








雑誌エコノミスト: 新型肺炎>>中国発世界不況
■悲観ムードに一転した市場
ダウが1日で1000ドル以上の下落を記録したのは2018年2月以来2年ぶり。米国株式急落に先立って韓国,イタリア,イランで新型コロナウイルス感染者が急増,アジアと欧州の株式市場が大幅な「売り」で反応。これに動揺したNY市場がそれまでの史上最高値更新モードを覆して一気に悲観に転じた。
2月25日には日経平均株価が一時前週末比1000円超安まで下落するなど,世界的同時株安の様相を呈した市場では,新型肺炎が金融危機を誘発しかねないという危機感が高まっている。
事実市場は完全にリスク回避にシフトした。米国長期金利は2月26日1.32パーセントに低下して2016年7月につけた過去最低水準を約3年半ぶりに更新した。
安全資産とされる米国債に資金が流入したのだ。米国債と同様リスクオフ時に買われる金の価格も上昇した。NY金先物市場は1時1トロイオンス1691.7ドルと2013年1月以来約7年ぶりの高値を付けた。WTI 原油価格は世界景気減速で原油需要が激減するとの見通しから続落した。
今回の世界同時株安は中国発の「新型肺炎ショック」が欧州にまで波及したことが引き金となった。背景には欧州経済が中国の依存度を高め続けてきたことがある。感染拡大は,中国への過剰な供給依存に対する警告だ。フランスのルメール経済財務相は2月21日,危機感をあらわにして,医薬品原料や自動車部品など中国への依存度が高い分野で調達先の多角化を図る様,業界団体トップ等に求めた。
中国への依存度を高めているのはヨーロッパだけではない。国際通貨基金(IMF)統計によれば,中国の国内総生産(GDP)が世界全体に占める割合は2003年の4.3%>>2019年の16.3%まで約4倍に拡大している。主な国ごとに総輸出額に占める対中国輸出額の割合を2003年と2018年で比べると,この15年間で輸出の対中国依存度は軒並み上がっている。
米国: 4%>>7%,
日本: 12%>>20%
にそれぞれ上昇した。さらに影響が大きいのは
豪州: 2018年時点で34%
韓国: 2018年時点で27%
ブラジル: 2018年時点で26%
である。世界経済の中国依存度が高まった結果,新型肺炎が世界経済に与える損失額はSARS流行時よりも大きくなるのはほぼ確実と見られる。
中国の依存度が高いほど中国向輸出減少や中国からの旅行者数の減少を通じて新型肺炎ショックの影響は大きくなる。主要国の中でも特にダウンサイドのリスクが大きいと見られるのが日本である
■日本は景気後退が濃厚
日本の対中国輸出で金額が大きい品目は
半導体電子部品,
半導体製造装置,
自動車工学機器,
化学品,
鉄鋼
など。
対中国輸入ではスマートフォンなどの通信機器を筆頭に,
スマートフォン,
衣類,
パソコン,
音響映像機器
と続く。新型肺炎の発生地・湖北省には半導体・電子部品や素材の 生産拠点が多く,サプライチェーン(部品供給網)の寸断によって影響が出る可能性がある。
画像センサーで好調なソニーの十時祐樹CFOは2月4日に開いた2019年4月~12月の決算会議の記者会見の場で「製造・販売・サプライチェーンに大きい影響が生じうる」との見方を示した。
湖北省に工場を持つホンダと日産自動車も,湖北省が企業の休業期間を3月10日まで伸ばしたことから,再開時期は 3月中旬以降にずれ込む見通し。
一方,中国からの輸入品目の内で金額の大きい衣類は,ユニクロが新型肺炎の影響で生産物流に遅れが出たとして,一部の新商品の発売を送らせた。
新型肺炎によるインバウンド(訪日外国人観光客)減少による悪影響もSARSの時とは比較にならないほど大きい。2019年の訪日外国人観光客数は2003年の約6倍である。うち中国人観光客数は約21倍に激増して全体の3割を占めるまでになっている。野村総合研究所の試算ではインバウンドが34%減ったSARSの最悪期と同程度の影響が1年続くと仮定すると,日本のGDPが0.45%(2兆4750億円)減少するという。日本の GDP成長率は2019年10~12月にマイナス6.3まで落ち込んでいるが,今回のインバウンド減少やサプライチェーン断絶による影響で持ち直しが遅れるのは避けられない情勢だ。それどころか2020年1~3月期も含めて三期連続のマイナス成長となる可能性が高まっており,景気後退入りが濃厚になってきた。
BNPバリバ証券河野チーフエコノミスト
「3月に感染が頭打する前提で見ても,2020年の日本経済は暦年ペースでマイナス成長になる可能性が高い。頭打が遅れればさらに落ち込むだろう」
■中国の過剰債務炸裂の危機
新型肺炎をきっかけに中国では金融危機の発生するリスクが高まっている。
中国の企業の債務残高の対GDP比は中国日本のバブル期を上回っており,社債の債務不履行(デフォルト)も米中貿易戦争が激化した2018年から激増している。そこに新型肺炎が襲いかかった。
ミョウジョウアセットマネジメント菊池代表
「資金繰りが悪化していた中国企業が新型肺炎で一気に止めを刺され破綻が続発しかねない。感染拡大が3月末まで続けば過剰債務の破裂が年内にも始まりかねない。そうなれば世界景気がさらに冷え込む結果,日経平均が14000円まで落ち込む可能性が出てくる」
新型肺炎ショックの飛び火で日本が被る経済損失は計り知れない。

ー雑誌エコノミスト3/13号, 

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